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tonbori堂フェイバリットMovie『ダーティハリー』

 tonbori堂のフェイバリット映画です。今でも好きな映画を上げる時には必ず入れる映画です。そしてクリント・イーストウッドを知った映画です(「荒野の用心棒」などマカロニ・ウェスタン時代を知るのはその後になります。)

動画はYouTubeより|『Dirty Harry - Original Theatrical Trailer』|Warner Bros.

 「ダーティハリー」(原題DIRTY HARRY)は1971年にアメリカで公開された映画で、いろいろ紆余曲折を経て現在の形になったとか。当初のタイトルは「Dead Right」死の権利、死んだ権利というタイトルでミランダ警告をしなかったためにせっかく逮捕した連続殺人犯が放免され、また殺人事件を起こしそれを老刑事が追うという話だったと聞きます。

  「ミランダ警告」とはアメリカの刑事ドラマ、映画などで度々あるシーンで、警察官が逮捕の時に読み上げる「お前には黙秘権がある」「喋ったことは不利な証拠として使われる可能性がある」「弁護士を呼ぶ権利がある。もし弁護士がいなければ公選弁護人を付けてもらえる」というやつです。これはアーネスト・ミランダという黒人が強盗の罪で逮捕され余罪として強姦を自白した際に弁護人を付けてもらう権利の告知が無かったという事で最高裁で無罪となった事からこの名がついています。


 この元の脚本に、「地獄の黙示録」 のジョン・ミリアスがリライトを加え、犯人を追う老刑事が都会のハンター、西部劇の孤高の保安官のように仕立てられたとの事。この時にS&W M29という大型ハンドガンを持たせるようにしたのもミリアスだったという話です。S&W M29は当時の拳銃としては世界で一番の威力を持つ拳銃用の実包(実弾)、.44マグナムを使用する拳銃としてスミス&ウエッソンから発売された回転式拳銃(リボルバー、リヴォルバー)でした。6連発で片手で撃つには強力な実包(弾薬)のため、その発射時の反動を受け止めるために大型化したフレームとグリップ、銃身を備えおり、.44マグナム弾はそれまでの最強の拳銃用実包であった.357マグナムより強力な弾薬として開発されました。その威力から一般的にはスポーツ射撃よりも、熊やバイソン、ムース(ヘラジカ)などを獲物とするハンターなどに好まれました。まさにミリアスが考えた都会のハンターにぴったりな拳銃でした。


  今でこそハリー・キャラハンはクリント・イーストウッドの代名詞のような当たり役として認知されていますが、当初はフランク・シナトラが主役のハリーを演じる予定でした。しかし降板し、その後幾人かの候補が上がりましたが、(中にはジョン・ウェインやポール・ニューマンの名前も)断られた末にマカロニウェスタンで名を上げたクリント・イーストウッドに決定。 監督はその前にNYに逃亡した犯人を追いかけてくる保安官役でイーストウッドが主演した「マンハッタン無宿」の監督をつとめたドン・シーゲルに。「マンハッタン無宿」がダーティハリーの原型と言われるのはそういう事からです。直接的なつながりは無いようですが、主人公のキャラ造形や演出が似通っているのでそうとられるのでしょう。


  キャッチコピーも「これは2人の殺人者の話である。一人はバッジをもっている」となかなか刺激的でありこれは作中のヴィラン(敵役)である連続殺人犯スコルピオ(サソリ)が当時映画の舞台でもあるサンフランシスコを騒がせていた連続殺人鬼ゾディアックキラーを彷彿させることで話題を呼んだそうです。そのゾディアックキラーに取りつかれた人たちのノンフィクション「ゾディアック」でもダーティハリー公開中の劇場にアンケート箱を置いてそれらしい人物が来ないか見張るという話があります。(このノンフィクション「ゾディアック」をベースに「セブン」のデビット・フィンチャーの手で映画化されています。) 孤高の主人公、官僚的で動きの取れない組織、市街地での銃撃戦、手ごわく奸智に長けたヴィラン 、ルールに縛られてピンチに陥るなどなどアクション映画のすべてが詰まっているといっても過言ではありません。


 当時同年に公開された実録的なスタイルでアウトロー刑事が主人公の映画「フレンチコネクション」がアカデミー賞を獲ったのに対して「ダーティハリー」はあまりにもヴィジランティズム(自警主義)が強すぎるためリベラル派からは忌み嫌われもしたと聞きましたが、やはり主人公の行動原理や悪党を退治するというのはスカッとするものです。だからこそ「ダーティハリー」にはその背景も含めて掘れば色々考えるところも多く、映画自体も完成度が高くアクション映画の金字塔として多くの亜流を生み出し、今もなお刑事ドラマのひな型としてあるのではないかと思っています。

※tonbori堂映画語り『ダーティハリー』よりテキストをページ用にしています。

※参考文献:町山智浩さんの『〈映画の見方〉が分かる本』より。

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