我が名は「ウルトロン」|『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』【ネタバレ】M.C.U再見Vol.11-Web-tonbori堂アネックス

我が名は「ウルトロン」|『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』【ネタバレ】M.C.U再見Vol.11

2018年3月26日月曜日

MARVEL movie

X f B! P L
動画はYouTubeより|Marvel's Avengers: Age of Ultron - Trailer 3|Marvel Entertainment

 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』はマーベル・スタジオの製作するマーベル・シネマティック・ユニバース(以下M.C.U)の11作目にしてフェイズ3への大いなる助走とも言うべき作品かもしれません。それというのも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』公開時にHuluでのマーベル作品一挙配信でM.C.U再見シリーズとしてそれまでの作品を一気見した時にそう強く感じたからです。

恐怖がやってくる。

 実のところ最初に観た時は、スケールの大きさとシリアスなトーンに圧倒されたものの、凄いとか素晴らしいとまでは思っておらず、何か歯切れの悪い感じの感想をツイートしていました。



 そして本家エキサイトブログにて書いたエントリです。

アベンジャーズ/エイジオブウルトロンを観た!【ネタバレ】 : web-tonbori堂ブログ

 つまらないとは書いていないし、凄いなって書いてますけど、ぶっちゃけで書くと上げ処、もしくは抜き処がありそうで無いという部分。そのため『アベンジャーズ』より微妙だったように思います。それでもウルトロンというキャラクターでアベンジャーズの面々の掘り下げや伏線、そして回収した伏線もあるけど仕掛けていったというのは間違いないと思ったんですが、ここに来て『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を経て、この作品が、今後のM.C.Uのために仕掛けられた大きな伏線になっていたという想いがさらに強くなりました。


 もっとも伏線のためだけに、これだけの超大作をこさえるとはリスクも大きかったはず。だからこそ前回奇跡のアッセンブルを演出してみせたジョス・ウェドンにメガホンを任せたんでしょうね。ジョスも苦しみながらもこの大役に応えたと思います。ただかなり消耗したみたいで、以後はマーベル・スタジオと距離を置いています。さすがにこれほどの作品に心血を注ぐと人はかなりのストレスを感じるのでは?、アベンジャーズ3&4のルッソ兄弟監督も大丈夫かなと少し心配になりますが彼らは『ウィンターソルジャー』から『シビル・ウォー』と連続ドラマ的に組み立てている感じがするので4で大いなるフィナーレを用意しているはず。それがジョスでも(ジョスもドラマ畑出身でそこを買われてアベンジャーズ登板だったはず)良かったとは思うんですが…、そこはまあ考えてもせんないことです。ということでちょっとストーリーを紐解いてみましょう。

ストーリー:

【ストーリーの最後まで言及しています。ネタバレ注意】

ソコヴィアの姉弟

 キャプテン・アメリカたちアベンジャーズは東欧にある内戦で疲弊していた小国ソコヴィアにあるヒドラの残党の拠点を攻撃していた。彼らはウィンターソルジャーの事件後、世界の平穏を護って、ヒドラの残党を追っておりその拠点がソコヴィアにあることを掴んで急襲したのだ。第二次世界大戦後、静かに浸潤していたヒドラの陰謀により世界の平和を裏から護っていたS.H.I.E.L.Dは崩壊。ヒドラに与していた者たちもそれぞれ地下に潜伏していたが、その内の一人、元S.H.I.E.L.D科学部門のフォン・ストラッカーが秘密裏にS.H.I.E.L.Dが管理していたチタウリやロキ、ダークエルフの回収物などを使って秘密の実験を繰り返しているという情報を掴んだためだ。


 激しい戦闘が繰り広げられる中、市街地にも戦火が及ぶが、群衆を守るために派遣したアイアンマンことトニー・スタークのアイアン・レギオンに街の人たちは勝手に街を戦場にするなと不快感を表す。堅い守りに苦戦はしたものの戦闘は終了、ホークアイが負傷したがハルクの活躍により作戦は成功を収めたが、荒ぶるハルクをなだめてブルース・バナーに戻すブラックウィドウことナターシャ・ロマノフだった。


 拠点は制圧したものの、実験体であった2人、マキシモフ姉弟はその場から姿を消した。姉のワンダは超常の力を使い衝撃波やサイコキネシス、そして相手の精神に干渉できる能力を持ち、弟のピエトロは目にも止まらぬスピードで敵を翻弄するという能力を持っていた。ストルッカ―が隠していたロキの杖「セプター」を回収しようとしたトニーにワンダは精神を操ろうとしたが、トニーの心の闇を見て、彼に幻視を見せるだけで十分にアベンジャーズに亀裂が入ると確信した。そして2人は何処かへ行方をくらました。

ウルトロン誕生

 ニューヨークにあるスタークタワー改めアベンジャーズタワーに戻った一行は戦闘中に負傷を負ったホークアイことクリント・バートンにトニーやブルース・バナー博士とも知己である遺伝子工学の権威チョ博士が治療に当たる事に。その間にトニーはブルースにソーの送別パーティまでの間にこのセプターの解析をしていた。ロキが人々を操ったこのセプターにはめ込まれていた宝石が力の源らしいのだがスタークの開発した支援AI、J.A.R.V.I.S.の解析によると、中身にあるのは一種のプログラムのようだと分かる。その事を知ったトニーはバナーに共同で開発していたウルトロン計画を進めようと持ち掛ける。平和維持活動プログラムであるウルトロンというAIを搭載したアイアンレギオンにアベンジャーズの活動をさせようとするもの。チタウリだけではないさらなる脅威に対抗するべく、また地球での平和を守る為のプログラムとして2人が考えたものだがそのレベルまで達したAIが開発できずに断念していたのだった。


 だがセプターにあるプログラムはJ.A.R.V.I.S.をはるかに超える領域を持ったプログラムでこれを解析し起動できればウルトロンとして使えるとトニーは考えたのだ。最初は未知のプログラムを使う事に反対していたバナーだったが押し切られる形でトニーに協力することになる。しかし何度かの起動実験を繰り返したものの起動できないままにソーの送別パーティの時間となった。再起動実験と検証ルーティンはJ.A.R.V.I.S.に任せてパーティに出席する2人。するとプログラムが起動し、ネットから膨大な情報を吸い上げ始める。気が付いたJ.A.R.V.I.S.に自分は何者かと問いかけ、自らの名前と任務を聞かされる。そしてその任務を達成するにはアベンジャーズを越える力を以って人間を絶滅させねばならないという結論に至りJ.A.R.V.I.S.を吸収しようとするが抵抗するJ.A.R.V.I.S.に対してプログラムを破壊し自らの入れ物を作り始めた。

操り人形の反乱

 パーティは和やかなムードでナターシャはブルースに気があるようだとキャップはブルースに告げたり、ソーのムジョルニアを持ち上げれるかなどを試したり平和なひと時を過ごしていたが、突如耳障りな機械音が鳴り響く、そして不気味な声が聞こえてきた。平和への道は1つ、アベンジャーズの消滅だと嘯きながら現れたウルトロンにより平穏は破られた。アイアン・レギオンたちを操りその場にいたメンバーを攻撃し始めるが、それを撃退するメンバー。しかしAIであるウルトロンは別のボディをつかってセプターを奪取、そのまま行方をくらましてしまった。また本体もネットを通じて外部に逃走してしまう。ウルトロンを内緒で作りだしたトニーに立腹するソーやキャップだったが、このまま放置はできない。


 ウルトロンはソコヴィアの市街地の中心にある古ぼけた教会でマキシモフ姉弟と会う。姉弟は内戦時に両親を亡くしたが、それは突如部屋に落下してきた爆弾のせいだった。爆弾は不発弾だったが、その爆弾を作っていたのは兵器産業だった頃のスターク・インダストリー製だったのだ。共闘することになったウルトロンとマキシモフ姉弟。まずは手始めに独房に入れられたストラッカーを暗殺する。どうやらストラッカーはまだ何かを計画していたようだった。そこから手繰ると彼は高性能のロボット兵器を作ろうとしていた。そのためにある人物をコンタクトを取っていたことが分かる。


 彼の名はユリシーズ・クロウ。武器商人で、トニーは一度見本市であったことがあるが怪しい男だったという。しかし彼の首の焼き印から彼がアフリカのワカンダに関係ある事からキャップとトニーはある金属の事を思い出す。その金属とはキャップの盾に使われている世界一強靭で衝撃を吸収する金属ヴィブラニウムであった。ワカンダはヴィブラニウムの産地。しかしヴィブラニウムはキャップの盾に使われているものだけの希少金属のはず。クロウの首にある焼き印は盗人という意味から考えるともしかするとワカンダからヴィブラニウムを持ち出したのかもしれない。アベンジャーズは南アフリカにあるクロウのアジトに向かう。

ハルク暴走

 ウルトロンたちは一足先にアフリカにある廃船置き場にあるタンカーを改造したクロウのアジトへ。彼に取引を持ち掛けクロウの口座に一瞬で大金を振り込むウルトロンに対し持っているヴィブラニウムを差し出すクロウ。しかし彼がトニーの名を出すと突如激昂するウルトロン。自分はスタークの操り人形ではないとクロウの腕を切り落とす。そこに到着したアベンジャーズ。たちまちクロウのアジトは戦場に。どちらもぶち殺せと指示するクロウによりアジトの中で銃撃戦となるがピーターとワンダの能力でソーとキャップ、ナターシャは幻影を見せられて戦闘不能に。しかし一度ロキに操られてしまったホークアイには効かずワンダをスタンガンで気絶させる。しかし眼に止まらないスピードのピーターによってまたもや取り逃がしてしまう。


 ウルトロンを追撃するトニーだったが、ウルトロンが姉弟にクインジェットに残してきたブルースに差し向けハルクを暴走させたため、ハルクを止めるためにブルースと共にこんな時のための安全弁として造っていた秘密兵器ベロニカを起動する。衛星軌道から飛んできたベロニカはアイアンマンの増加アーマー、ハルク・バスターだった。対ハルク用に建造され、万が一ハルクが制御不能になった時に止めるために製作されたスペシャルアーマーだった。ワンダに幻視を見せられて暴走するハルクはヨハネスブルクの市街に。街中で暴れるハルクに警官隊が発砲するがまったく効果が無く被害が拡がっていく中、ベロニカの追加装備、対ハルク用ケージ(檻)にハルクを閉じ込めるが地面をたたき割って地下から抜け出すハルク。呼びかけるトニーにも突進してくるハルクに対してハルク・バスターで立ち向かうトニー。片腕をもぎ取られるが予備パーツも搭載したベロニカでなんとかハルクを止めるべく奮闘するが、大人しくなるどころかますます暴れるハルク。


 建設途中のビルディングを急きょ買取りそこに叩き落してやっとのことでハルクを止めたトニーだったが、街の被害は甚大で、アベンジャーズの超法規的活動に対して避難が巻き起こる状況になってしまった。

ホークアイ

 ワンダの精神攻撃でまともに戦える状況にない一行。この状況を一旦やり過ごすため、バートンが心当たりがあるとクインジェットの機首を向けた先は彼の住居である農園だった。私生活は謎のホークアイだったがシールドのエージェントとして活動していたころに結婚、2児のパパでもあったのだ。当然家族の事は秘匿されフューリー元長官の手により記録は削除。この場所を知っている人物は誰もいない。今注目を避けるためにはうってつけの隠れ家だった。そこでひと時の安らぎを得るがソーはワンダの攻撃を受けたときに見た夢の意味を探るため一行の元を離れ旧友である科学者セルヴィクの元へ向かう。


 そして入れ替わりにフューリーが農園に現れインターネットの重要なトラフィックポイントのあるオセロで仕入れた情報を一行に告げる。核ミサイルの発射コードがウルトロンにクラッキングされようとしているのだが、何者かの手により攻撃が跳ね返されているという。トニーはその正体を探るべくオスロへ。残りのメンバーはキャップを中心にヴィブラニウムを手に入れたウルトロンがボディを作るであろうと推察される韓国ソウルのチョ博士の研究所へ向かう事になった。ソーはセルヴィクとともに北欧神話に伝わるノルンの泉に向かい、泉に浸かれば予知夢を観ることが出来る。そこから謎のビジョンの正体を探る事に。そしてセプターの石の事、インフィニティ・ストーンの事を知る事になる。

ヴィジョン誕生

 しかしウルトロンは一足先に研究所に現れセプターの力をを使ってチョ博士をあやつり博士の遺伝子クレードルを使いヴィブラニウムを使ったボディを作成し、そこに自らの意識と、セプターのインフィニティストーンを使って人間以上の最高の頭脳を手に入れようとしていた。その目的は人類の殲滅。ワンダはウルトロンに触れてその計画を知ってしまう。世界中がソコヴィアのようになってしまう。恐怖したワンダはピエトロともにウルトロンに離反。チョ博士のコントロールを解除しクレードルで生成されているボディへの意識の転送を止めた。


 その頃研究所へ到着したキャップたちと交戦するウルトロン。クレードルを持ち出し別の場所で意識をアップロードされてしまうと手遅れになる。ナターシャとバートン、キャップはワンダとピエトロの手助けもあってクレードルを奪還することに成功するがナターシャがウルトロンに囚われてしまった。クレードルを持ち帰ったキャップたちは体勢を立て直すためにアベンジャーズタワーへ戻る。そこにオスロから戻ったトニーがいた。インターネット上でウルトロンの核ミサイル発射コードを守っていたのはJ.A.R.V.I.Sだった。正しくはJ.A.R.V.I.Sだったものの残骸。ウルトロンに攻撃された時に防御するという基幹コードだけを切り離して自らはJ.A.R.V.I.Sだったことを知らずにウルトロンからの攻撃を凌いでいたのだった。


 トニーは到着したウルトロンの器になるべくつくられたボディを見て、ここにJ.A.R.V.I.Sをダウンロードすることを思いつく。ウルトロンに対抗するには同じようなAIで対抗するしかない。戻っていたバナーを説き伏せてインストールを開始する。トニーの行動に気が付いたワンダはスティーブにトニーがボディにJ.A.R.V.I.Sをインストールしようとしている事を伝え止めさせるために研究室へ。憑りつかれたように作業をするトニーは聞く耳をもたない。ピエトロがコードを引き抜くがバートンに床を撃ち抜かれ落下、キャップが盾を投擲し機器を壊してダウンロードをとめようとする。機器がダウンしたその時、ソーが乱入しムジョルニアでクレードルに電撃を与える。彼は泉で見たビジョンに従ったのだ。そしてクレードルにいる何かが目覚めた。インフィニティ・ストーン、一つマインド・ストーンを額に埋め込んだ、ウルトロンでもJ.A.R.V.I.Sでもない何か。彼はまだ生まれたてだが瞬時に情報を読み取っていき状況を把握していった。しかし敵か?味方かはまだ分からない。本人も救世主なのか、破壊者なのか。ただ彼はムジョルニアを持ち上げることが出来たことからキャップたちは彼を信用する事に決めた。

ソコヴィア崩壊

 逃亡したウルトロンは放棄されたヒドラが拠点としていた古城を根城にしていた。またそこで何かを計画している事は間違いない。市街地が戦場になるためまずは街の人たちの避難誘導を。そしてバナーは捕らわれたナターシャを救いに行くがナターシャは、今は緑の巨人の力がいる時と彼を階下へ突き落としハルクを覚醒させる。ワンダの精神操作とピエトロが猛ダッシュで街のあちこちで逃げろと声をあげるが、ウルトロンもそれを予想しており計画していた装置を起動させる。全員避難が完了していない最中にソコヴィアの市街が大きく揺れる。そして街が浮き上がる。ウルトロンはリパルサーで街を持ち上げ、大気圏外から落下させ地球を氷河期にして絶滅させようと目論んでいたのだ。


 クレードルから出てきた何者かはウルトロンと対峙する。俺の究極(ヴィジョン)になるはずだったと。彼は言う取り戻せばいいと。そしてヴィジョンはウルトロンとネットの接続を断った。あとはウルトロン軍団の閉じられたネットワークしか彼の逃げ場はない。起動装置は街の中心にある教会。その装置を止めない限りソコヴィアの落下で地球の危機は回避できない。しかしウルトロンも軍勢と共にアベンジャーズを迎え撃つ。倒しても倒してもきりがない。高度がどんどん上がっていくがまだ街には人が残っている。そこに大型の機影が!それはS.H.I.E.L.Dのヘリキャリアだった。フューリーとマリア・ヒルが避難民誘導の指示をだす。


 トニーが解決策を見出す。アークリアクターの全エネルギーとソーの電撃をつかってこれをオーバーロードさせ停止させ破壊する方法。被害は最小限に食い止められるはず。しかしその局面で子供をウルトロンが奪ったクインジェットの銃撃が襲う。思わず飛び出すバートン。しかし彼の代わりに弾丸を受けたのはピエトロだった。クインジェットにはハルクが飛び乗りウルトロンをたたき出すピエトロと精神的につながっているワンダは慟哭とともにエネルギーを解放しウルトロン軍団を粉砕。残ったウルトロンをゆっくりと破壊し落下しつつあるソコヴィアの残骸で気を失うがヴィジョンがそっと救い出す。ハルクはナターシャの無線の声を聴いていたがそのままステルスモードのクインジェットで何処かへ姿を消す。ヴィジョンはソコヴィアの崩壊を見ていた最後のウルトロンと対峙する。そしてヴィジョンは最後のウルトロンを消し去った。

エピローグ・アベンジャーズアッセンブル

 ソーはアスガルドへ戻り強力なインフィニティストーンが4つも現れた事を危惧し、戻って調べる事に。そしてトニーはウルトロンの一件もありアベンジャーズの活動からは身を引くことにした。代わりにキャップにスターク・インダストリーの倉庫を基地として提供。キャップはウォーマシン、ヴィジョン、ファルコン、ブラックウィドウそしてワンダ(スカーレット・ウィッチ)を含めたメンバーでアベンジャーズとして平和を守る決意を新たにしたのであった。


 そしてどこか宇宙の深奥であの男がまだインフィニティストーンが嵌められていないガントレットを取り上げる。「よかろう、私の出番だ」

恐怖は闇からやってくる

動画はYouTubeより|Get a Special Look at Marvel's "Avengers: Age of Ultron"|Marvel Entertainment

トニーの場合

 この作品は「恐怖」/Fear(フィアー)が一つのテーマになっています。トニー・スタークがワンダ・マキシモフ(スカーレットウィッチ)に見せられた、いや彼が心の中で思っている恐怖、アベンジャーズ壊滅のビジョン。それは強迫観念となって彼を駆り立てます。『アイアンマン3』でも『アベンジャーズ』の時にポータルの先の宇宙に浮かぶ数多くの戦艦、敵を見てトニーはPTSDになりました。その時は少年との触れあいや、アーマーを捨てる事によってその事から立ち直った…ように見えましたが、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」S.H.I.E.L.Dもヒドラによって壊滅的打撃を受け、今、世界の危機を救えるのはアベンジャーズだけとなった状況、宇宙からの脅威が消えたわけではありません。トニーのPTSDは治まってはいますが心の奥底ではやはり全てを失うのではないかという恐怖が渦巻いているのです。


 それまでは地球の危機には秘密裏にS.H.I.E.L.Dがそれに対して備えてきましたが、ウィンター・ソルジャーの一件後はそう言ってる場合ではない訳です。アイアンマンとしてこの状況を放っておける訳もなく結局アーマーに身を包み、数々の道具などを提供して全世界的自警活動に勤しむ事になる訳です。アイアン・レギオンというアーマーを基にしたボットを作っているのも、チームの皆を出来れば危険な目に合わせずにという事からもありますが、誰かが死ぬという最悪の事態も想定していて、それはやっぱり起きて欲しくないと思っていたわけです。


 『アベンジャーズ』でのコールソンの死亡はその後の作品では気にしているようではないけれどトニーの奥底には、両親の死亡事故のこともあり、人が死ぬことが怖いというのあるのかもしれません。(自分のせいで人が死ぬ)そんなわけで、セプターにはめ込まれた異星人のアーキテクチャを解析し自ら開発した平和維持プログラム、ウルトロンに転用できないかとなったわけです。

バナーの場合

 トニーと協力して基礎理論部分や多くの部分で貢献していたブルース・バナーも最初は難色をしめしましたがやはり協力します。それはハルクになってしまう(別人になる)恐怖からでしょう。怒りによって変身し、ある程度制御できるとはいってもハルクになってしまうと完全にはバナーでは制御は出来ません。その怒りが収まるまでは。


 チタウリのような連中がまたくるかもしれない、非常に不安定な状況、他にもアスガルドをはじめとするユグドラシル世界など地球はまだまだ危険です。静かに暮らしたいと思っても強大な力を利用されるかもしれない恐怖。だからバナーもトニーに協力したと思います。結果これはますます彼を追い込んでしまったかもしれませんが。

キャップの場合

 キャプテン・アメリカ(キャップ)は行動規範が明快です。単純とも言われそうですがそうではありません。手の届く範囲の事をやるだけ。心が折れなければ何度も立ち上がる。仲間を信じる、です。だから『ウィンターソルジャー』の時にフューリーの偽装に対して怒ったり、インサイト計画に反対するのです。人を救うのは人。そういう明快な論理がありますが一方で自分の事を後回しにしてしまうきらいがあります。もっとも裏表がないキャップだからこそ人はついてくるし信頼もされる。ただ権力者には嫌われる傾向があると思いますが。それともう一つ。正論すぎて耳が痛いというところです。そして頑固だし、トニー以上に仲間の犠牲は払いたくないと思っている。それはバッキーの事もあるからだと思いますが。それが後々、シビルウォーで再燃してしまいます。が、それは今まだ萌芽でしかありません。

ナターシャ、ブラックウィドウの場合

 ナターシャ・ロマノフ、彼女はスパイとして文字通り身をその身を犠牲にしてきました。ロシアのスパイであった彼女がどういう経緯を経て(レッドルームという訓練施設で訓練され望まない避妊手術を受けていた事さえも今回明かされました)か詳しい事はまだ全て明かされていませんがブタペストでホークアイが彼女を処理しにやってきた時に逆にリクルートしフューリー率いるS.H.I.E.L.Dに転籍した時も相当な何かがあったはずです。


 実はS.H.I.E.L.Dはアメリカの機関であっても国際的な組織であり世界平和委員会の監督を受けています。それが実はヒドラの浸潤をうけてD.Cにある本部ビル、トリスケリオンは崩壊してしまったわけですがある意味フリーランスなポジションのナターシャは事件後の公聴会もフリーの立場でアベンジャーズの活動をしていたようです。ちなみにS.H.I.E.L.Dのフューリーの副官であったマリア・ヒルはスターク・インダストリーに再就職しアベンジャーズの秘書的な役割を果たしていました。


 とは言え誰にも心を許さない孤独な女が、やはり誰とも心をかわせない孤独な男に惹かれるのも不思議じゃありません。(もっともバナーにはロス将軍の娘のベティがいたじゃん!って話になりますけどそこは置いといて)ですが彼女は最後、危機に対してバナーと逃げる道を選ばなかった。正しいんだけど、どうしてもそれを選べない。ちょっと臆病な人なのかもしれないなと今回は感じました。

クリント・バートン(ホークアイ)の場合

 彼の場合は恐怖は家族を会えなくなる、または家族が危機にさらされるでしょうか。S.H.I.E.L.Dのベテランエージェントとして彼もまた行動規範が明快な人物です。その彼らしさがアベンジャーズを繋ぎとめているかすがいなのかもしれません。(彼の妻もそう指摘しているシーンが印象的です。)ナターシャでは背負った闇が深すぎる。バートンもそれなりに裏事の仕事をしてきた人物なんですが、妻という支えと守るべき子どもがいるという部分でつなぎ留められているように。


 今回はバートンは名セリフが多くてソコヴィアの最終決戦でワンダにかける言葉は予告編でもつかわれていましたが、本編で見ると最高のタイミングで発せられている事がよく分かります。あの時の彼は超人ではないですがヒーローというのに相応しい。そんなセリフでした。

「君たちが何者でも関係ない でも外に出たら戦え 残るなら誰かをよこす でも一歩外へ出たら君は(一息おいて)アベンジャーズだ」 

 「話せてよかった」と外にでるバートン、めちゃくちゃカッコいいシーンです。毎回ここで心が震えます。

マイティ・ソーの場合

 なんというか能天気王子だけど、それなりに彼も苦労しています。弟はすぐに裏切るし、母親は亡くなるし。それでも彼には愛したジェーンがいますからまあこの中では闇は薄い方です。どちらかと言えば彼の一族の闇の方が深い。とはいえ神様なのですべてを豪快にぶっとばすのがソーなんですが(笑)


 実はアベンジャーズではソーはコメディリリーフな役割も担ってて、力押し担当でありお笑い担当であり、あとはヒント担当という美味しい役回りを担っています。当然自身の主役映画ではヒーローとして活躍しますけど、どちらかと言えばアベンジャーズでは勢い担当な感じです。でもそこがいいんですよね。ただ『インフィニティウォー』ではそんなソーがどうなってしまうのか気になるところです。

ヴィジョンの場合

 彼は…。ウルトロンの鏡の反対側ですよね。独立した意思がありますが。また元にJ.A.R.V.I.S.があるとはいえ、マインドストーンという未知の力もあるわけで一番、得体がしれないものの、まだ赤ちゃんという見方もできる不思議な生命体だと思います。今回の『エイジ・オブ・ウルトロン』ではデウスエクスマキナな活躍でしたが、彼の本領はインフィニティウォーからではないかなと思っています。

ワンダ&ピエトロ・マキシモフ姉弟:スカーレット・ウィッチ/クイックシルバー

 この2人はヒーロー活動につきものな闇の部分から産まれたキャラ設定となっています。もっとも直接アベンジャーズの活動でという訳ではなく、それは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でのジーモがそれを体現していく事になるのですが、それでも世の中のきれいごとに反した部分から産まれてきた存在であることは間違いありません。


 キャップが2人に理解を示すのも、彼がそういった闇から産まれ出た存在だからです(キャップも戦争という闇から産まれた存在といえる)だからこそソウルでウルトロンの真の目的を知って造反した2人をためらわず受け入れることが出来たのです。そういったキャラクターのとして設定できたことによりピエトロの死もそこからワンダがアベンジャーズに参加するのも分かるんですよ。戦争があって頼れる人もなく死にかけた時にみたスタークインダストリーの文字だけを復讐の糧として生きてきた2人だけど祖国の危機に多くの人を見てその命を救う事はあの日の自分を救う事だと知り、ピエトロはそれを貫いて死んだ。だからピエトロの遺志を継いでワンダはアベンジャーズに参加することにしたんじゃないかなと思っています。

ウルトロンの場合

 これについては最後のヴィジョンとの対話が全てでしょう。トニーと比較されると激昂するのもそこです。

 ヴィジョン(V)「恐れている」
 ウルトロン(U)「お前を?」
 V「死を 君が最後だ」
 U「お前がなるはずだった スタークは救世主を求め 結局 奴隷を作った」
 V「君も私も出来そこない」
 U「(笑)たぶんな」
 V「人間は不思議だ 秩序と混乱を相反するものと信じ 支配しようとする だが欠点も魅力だ君はそこを見落とした」
 U「滅ぶ運命だ」
 V「そうだ だが永遠に続くものは美しくない 私は彼らといたい」
 U「耐え難いほどのうぶだな」
 V「それは…昨日生まれたから」
 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』映画本編の字幕台詞より

 ヴィジョンは儚いが精一杯いのちを燃やす人間をいとおしく思い、ウルトロンは完全な自分が不完全な人というものに造られて、その軛から逃れたかった。そのためには人を全て排除しなくてはならないという強迫観念にかられていた。その恐怖から逃れるために人類を滅ぼそうとしたのです。そしてそれはもしかするとトニーの心の奥底にあったかもしれないものと思うとよりこの台詞は重みを増します。

混沌より産まれたもの

 ウルトロンが滅ぼされた事で物語は決着をみましたが、数々の混乱が残されました。それは『シビル・ウォー』で頂点を迎えアベンジャーズは決裂してしまいます。その芽はこの時に播かれたと言っていいでしょう。もっと言えば『アベンジャーズ』からのサノス登場からこの流れはずっとあったわけなんですが単独ヒーロー映画は伏線としてそういった事情はあってもメインストリームではありません。『アベンジャーズ』は各映画のヒーローたちが未曾有の危機に対して対抗するというストーリーの中で、ゆくゆくは最強のヴィランとしてサノスをぶつけようと考えていたはず。


 ただ『アベンジャーズ』まででいい流れが出てきたので、最強ヴィランを出すにふさわしいお膳立てと対抗する地球のヒーローたちも揃えたい。そう考えたのだと思います。でも普通はリスキーなので、そういう最強ヴィランはすぐにでも投入したいはず。でも存在だけを匂わしそれに向かって走らせてきたケヴィン・ファイギはやはり大した人物です。そう考えると前作の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でサノスの義理の娘であるガモーラが出てきたことも、ヒーローチームとしては知られていなくともロード・トゥ『アベンジャーズ』には必要だったんだなとよく分かります。


 一見、それぞれ別の要素であったものが気が付けば一つの方向に向かっている。『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』もそういう重要なエレメントであったのだなとあらためて思いました。『アベンジャーズ』シリーズのいわゆる承というべき作品として、なくてはならない1本です。

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