「双頭竜の旗のもとに。-ジーク、サイレン、フィルモア帝国の血統-」|『ファイブスター物語/FSS』解説/考察-Web-tonbori堂アネックス

「双頭竜の旗のもとに。-ジーク、サイレン、フィルモア帝国の血統-」|『ファイブスター物語/FSS』解説/考察

2018年3月17日土曜日

FSS manga

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動画はYouTubeより|「花の詩女 ゴティックメード」劇場予告編|KADOKAWA Anime
監督 脚本 永野護|(c)EDIT co.Ltd

※【月刊ニュータイプ2018年4月号『ファイブスター物語/FSS』の内容についてネタバレしています。】

 『花の詩女 ゴティックメード』の予告編を貼ったのは実はこの時から始まった話でもあるからです。古の血統だけではなく、ボォスが惑星カーマイン(茜の星)だったころの縁が今に至ったというところまで。そこからのお話とは…。

月刊ニュータイプ2018年4月号/Amazon

超帝国の流れを汲む超大国フィルモア帝国

 フィルモア統合帝国の堅牢なシステムを表している双頭の竜。フィルモア・イーストであったドナウ帝国の紋章でありましたがその前にドナウと太陽王国に分裂する前のダス・ラントの旗印であります。カラミティのあるノウズ太陽系はジョーカー星団では一番古い星系であるとされ、カラミティには超帝国の遺跡のみならず、その痕跡がたくさん残っており、バスターオーシャンといわれるバスター砲で穿たれた海もあります。


 元々は超帝国ユニオ、ファロスディー・カナーン(アッセルムラトワ・ディスターブ)がジョーカー星団を去った後に、残った血統の者たちが新たな統治のシステムとともにそれぞれ国を打ち立てたとされていますが重産業で名を成したスパチュラ―国は再び戻ってきたナ・イ・ンによりバスター砲でカラミティより消し去られたなど過去より諍いが絶えなかった歴史があります。


 そんななか歴史は過ぎ、星団歴451年、後にフィルモアの基となるドナウ帝国の第3皇子、ドナウ・ガァ・トリハロンが惑星連合の要請によりウエスタ太陽系にある植民地の惑星カーマイン(後のボォス)の新たなる詩女ベリンの警護に付くことになります。これが後の世に『ロード・ヘリシオスの戦い』と呼ばれる詩女暗殺未遂事件は『花の詩女 ゴティックメード』でその顛末が描かれました。トリハロンがベリンの都行きに同道したことにより、詩女様の託宣を受け、この後ダス・ラント時代から2つに分かれた大国、ドナウ帝国と太陽王国が再び一つの巨大統合帝国となったわけですが、ジークボゥの真の名前はトリハロンが巨大統合帝国となったフィルモアの初代皇帝「サイレン」の名をもっていることはつい先々月号にて明らかになりました。

恐れ多い、その名前「サイレン」

 サイレンの名前はGTM改変の前はモータヘッドの名前として我々に馴染のある名前だったわけですがサイレンにあたる騎体はホルダ31型ユーレイとなり別の意味を持つ事に。DESIGNS4では巨大統合帝国をまとめた人物の名前として創始者の名前だけではなく「偉大なる統治者」としての意味を持つとあります。帝国民にとって、その名はお畏れ多い名前となり口に軽々しくだすことがためらわれるその御名というものとなったわけです。ジークの真の名前が「サイレン」という事は、フィルモアの統治者として期待もあったのかもしれません。カラミティという星の寿命がすぐにではなくとも尽きかけている状況下、ボスヤスフォートの起こした混乱を足掛かりに再びボォスへの干渉を考えているフィルモアに直系王家のブラウ・フィルモア家の男子が誕生しこと。そしてその皇子は騎士であるというのはどうしても始祖を思い起こさせるのかもしれません。そうでなければ恐れ多いといわれる名前を付けようはずもないと思ったのですが、その大きな名前と流れる血が結果、彼をノルガン・ジークボゥと名乗る事とさせたのかもしれないと考えるとなんとも複雑な気持ちにさせられます。


 もっともトリハロンが目指した堅牢なシステムはフィルモア直系やレーダー王家でも安易に皇帝になれないようになっています。フィルモアの名を持つ皇帝はフィルモアの長い歴史の中でも52代の皇帝のうちレーダー王家からは8名、フィルモアからは5名の皇帝しか誕生していないことからも明白。またトリハロンがサイレンを名乗った時、生涯独身であったわけで完全直系の皇帝はいないわけです。トリハロンがそうしたのは流れる血を少しでもすくなくするためにという考えなんだとは思いますが、それでも血は流れるのがこの時代の椅子取りゲームなんではないでしょうか。そういえばトライトンはカーテンの奥の奥コールタールのようなドロドロという言葉がありました。そして『アクト4-5|パルスエット~二羽の小鳥』においてアラン・リーがかしずく玉座にいる「お館様」は誰なのか?となるわけです。(やっと本題)

ボルガ・レーダー・フィルモア

 ということで今月号(NT2018年4月号)の感想を書いたときに「DESIGNS4」にあたってみてボルガ・レーダー・フィルモアのジェイン・ボルガ・フィルモア女王ではないかと書きました。それは太陽王国から続くボルガ・レーダー・フィルモアの紋章であるウォータークラウンの紋章が玉座の後ろにあるからです。双頭竜とともにウォータークラウンの紋章がある事からかなりの高位にいる人物となれば女王ではないかと推察したわけですが、TwitterやG+のFSS塾でお世話になっているチークさんは、ボルガ・レーダー・フィルモア関係者ではあるけれどお館様はジェインではなくバシル大王の妻でもあるポーラ・ボルガ・レーダー王女ではないかと推察なされています。

チークさんのブログ『絶対秘密。』より|お家騒動を垣間見る。|絶対秘密。

 この推察は説得力があります。まず第一にお館様は老齢であるということ。ジェインもジョーカーでは壮年の歳ではないかと思われますが、お館様は見た目も前皇帝のレーダー8と歳は変わらない感じもあります。となればポーラ王女という説には説得力があります。またアラン・リーがケンタウリ家の一員であることも明らかになりました。系統でいうとパーマネント・レーダー王家の系統(トライトンも同じくパーマネント・レーダーの分家筋)のようです。パーマネント・レーダー家はボルガ・レーダー・フィルモアの分家筋。ケンタウリ家の者が仕える事には不思議はありません。


 ただポーラ王女とすると「全ての始まりは我が姉の産んだ均衡の乱れとはいえ…」この均衡の乱れというのは何を指しているのか。ポーラ王女がバシル大王と婚姻を結んだことでフィルモアのパワーバランスは乱れたと見る人がいますが、とすればこのお館様はポーラ王女の妹?(系図にはありません)そしてジェインであれば姉はおらず兄となります。ともかくお館様ってのは、その家で一番偉い人であるのでポーラにせよジェインにせよ、まったく新しい登場人物としてもボルガ・レーダー・フィルモアの関係者であることはほぼ間違いなく、それでも現在勢力を増している連中とは違い、動かせる駒はアラン・リーのみということで表に極力出ることを控えている、家格は上だが祭り上げられて手がでないところの高貴なお方と改めて推察しました。

ヨミ・ルーカ・レーダー・フィルモア2

 ところで「トホホの詩女」ことナカカラが茄里の前に現れましたが、その前にヨミ・ルーカの名前が彼はジー・ボルガ・プリンシパル・レーダース王女とドナウ帝国最後の皇帝、ドナウ・ガァ・ニーゼル(ニーゼルの名は現在もブラウ王家リリが引き継いでいますね)との間に産まれた統合のシンボルともいえるブラウ・フィルモア王家の嫡子でありフィルモアの名を持つ2人目の皇帝でもあります。


 彼はDESIGNS3にて星団歴2000年初頭の聖宮ラーンの東西宮騒乱に関わっていることと、ナカカラとの幼い恋の物語があると予告されています。まだキャラシートは出ていませんが過去の人物とは言え大きなストーリーを持っている人物と思われます。多分推測でしかありませんが、彼の事とジークの事がどこかでリンクしてくるかもしれません。それは当然『花の詩女 ゴティックメード』にもかかってくるし、フンフトにもかかわることになってくるでしょう。ますます血統の話が濃くなってきているようにも思いますが、パルスエットの章ということで、ヨーンの物語でもあるわけです。今回の『二羽の小鳥』もヨーンが騎士になるための準備であり騎士とはゴティックメードを駆る者として、知るべき事を知る時なのでしょう。トラフィックスでミューズがカステポーに降り立った時のように。


 そういえばトラフィックスの開幕もカイエンのエピソードでした。そして重要な人物としてミハエル・レスターとそのパートナーであったパルスエットがいたのです。モチーフを語り直すのではなくさらに編んでいく。これこそが運命の三女神によるおとぎ話『ファイブスター物語』の面目躍如ではないでしょうか。それとともに『二羽の小鳥』たちは茄里とクリスティンだけではなくリリとショー・カムにもかかってくるのだと思います。これはリフレインなのかもしれないなと読んでて思いました。いや音楽には不案内なtonbori堂ですが、繰り返される、それぞれのストーリーというのがそういう言葉を思い起こさせるのです。


 このアクト4「パルスエット」の章の終着点でヨーンがどのように成長していくのかとともにジークがいかにして皇帝になるのかというのも並行して描かれていくのだろうなと強く意識するエピソードになった『二羽の小鳥』そこにはクリスティンと茄里の事もということも入ってるわけです。(今回は出番がないけどちゃあと桜子も。ただしこの2人はファイブスター物語の主人公に近い位置にいるため別の役割もあると思います)まさにトラフィックス3、トラフィックスではカイエンとアウクソー、ミューズと静、カイエンとヤーボの事が描かれていきましたが、そういった交差点のような交錯するエピソードが次々と展開されていっています。今後はどのようなキャラクターのラインが交錯するのか。楽しみです。

追記:20180413

 2018年5月号連載の扉絵の下、「お詫び」にてジェインはモーズの妹とありましたが正しくはバシル大王の妻であるポーラ・ボルガ王女の妹なんだそうで。前提条件がくずれてしまったけれどジェイン女王で決まりです。両方の血を引く人物としてリリとともにフィルモアの古き帝国支えるべき血統ながらも現在の状況を憂いている。そんな感じでしょうか(実際にはもっと複雑と思われますが)

※巨大2重帝国の成立は『花の詩女 ゴティックメード』で語られていますが詳しくは『F.S.S:DESIGNS4覇者の贈り物』をご覧になるのが良いかもしれません。

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