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現代のダークヒーロー降臨|『コードネームミラージュ』最終回を終えて【ネタバレ】|tonbori堂ドラマ語り

2017年9月25日月曜日

drama

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 「現代のダークヒーロー降臨」一言で言えばそういう話だったかなと。もともとこの枠は牙狼シリーズの枠で近年はアニメと特撮を順繰りに放送していました。そこの製作母体は同じ東北新社ですが、ここにアクションドラマとして新たなシリーズを投入してきたのです。

動画はYouTubeより|華麗な格闘スタイルが話題のドラマ『コードネームミラージュ』特別映像!
|(c)2017広井王子/「コードネームミラージュ」製作委員会|oricon

深夜枠だからこその冒険作。

コードネームミラージュ/ロゴはイメージです
コードネームミラージュ/ロゴはイメージです


 ここだけの話ですが実写版パトレイバーのTNGパトレイバーももしかしてこの枠を想定していたんじゃないかなと思ったんですが、この枠30分なんですよね。なのでああ言うスターチャンネルでの放送になったのかなと、これは余談ですが。

 春クールから始まった『CRISIS』と同じく公安警察がメインの物語は、原作を『サクラ大戦』などのゲームを数多く手がけた広井王子が手がけ、メイン監督に『地獄甲子園』の山口雄大を起用するなど牙狼とは違う同じ大人向けではあるけれどファンタジーさではなくリアルな現代向けハード活劇を指向していたように思います。ある意味現在のドラマシーンから逸脱したいい意味での規格外の存在でしたね。これはアニメや牙狼のような実写特撮ダークファンタジー枠だったことも幸いしていると思います。



Twitterのコードネームミラージュ公式アカウントのツイートより
|(c)2017広井王子/「コードネームミラージュ」製作委員会

 それは公式サイトにもある広井さん言葉にもある「警察官が止まれーといって威嚇射撃をする、これはギャグかと」いう部分から海外ドラマのような銃を抜いたときは相手を撃つ。そんなドラマを作り上げた部分は正直ありがとうございましたという気持ちです。しかし毎回何かしらの発砲シーンや格闘シーンがあるドラマが深夜にしか出来ない世の中でもあるのだなあとちょっとしみじみもします。

K-13


 何故K-13という名称なのかは結局はっきりしませんでしたが、ドブネズミが御崎に聞いた事もありましたがなんかスルーされていましたね。Kは警察、または警備局のという理由よりはただの符丁みたいなものかもしれません。当然13もです。ゴルゴ13のような。

 K-13は日本にとって好ましくない存在を秘密裏に「処理」する非公然組織です。所属する人員はその存在を抹消されている…というのは割と建前っぽくて存在を抹消されているのは処理要員のミラージュくらいのようで、その他の実働部隊はスモークは表の顔がありましたし(公安特殊課の係長)、後任のサンダーも左文字の直属の部下として勤務しているようです。組織は警察庁でも知っている人間は限られており極少数。政府でも警察官僚出身の官房長官ほか僅かというトップシークレットの組織で『CRISIS』の公安機動捜査隊特捜班よりさらに裏の部隊といっていいでしょう。特捜班は言わば組織の独立愚連隊ですが、こちらは闇に隠れし忍者みたいなもので、これは東北新社のプロデューサー二宮清隆氏が広井王子氏にプロットを依頼した時に「現代の忍者もの」というオーダーからもそれを想定していたようです。情報収集、分析、そして時には暗殺なども行う特殊な部署のトップエージェント。まさに現代の忍者なわけです。

ミラージュ/森山真一

 主人公で表情が乏しく任務を遂行するマシーンといった初登場時から特殊な人間として描写されてきたミラージュはまさに幻のような人物で、最後はK-13を去り野に放たれました。今後彼がどういった行動を起こすのかは分かりませんがまずは相棒を元通りに直すことから始めるようです。記憶が無い、感情が欠落しているミラージュですが、鐘ヶ淵やロビンといる時はリラックス出来ているのか若干表情が柔らかくなります。ですが本当の感情を露わにしたのはスモークとの対決からでしょう。あの時の咆哮でミラージュは組織のコマから野に放たれた野獣になった気がします。それでもあの後まだK-13にいたのは自分の居場所が分からなかったからではないかと思うのですが。


 しかし寄る辺なき男となったミラージュは今後どういったアクションをとるのかまったく不明です。2期があるかどうかは分かりませんが(tonbori堂はお願いしたいなと思っておりますが)組織の軛から外れたアウトローのミラージュがペイルライダーとして日本の闇を撃つのか?それともダークヒーローとして混沌を招く者になるのか?どうしたって次が観たくなる引きでした。どうなるかは一切分かりませんが是非期待したいですね。演じたのは『仮面ライダーW』の左翔太郎役桐山漣。今でも彼を翔太郎と呼んでしまうtonbori堂としては、これはいい役だったなと、翔太郎これ美味しいぞと思いましたね。特に18話でのスモーク(駿河太郎)との対決シーンは、日本のドラマでまさかガンフー観れるとはとちょっと感動しました。彼のキャリアの中でも今後重要な位置を占めるかもしれません。

御崎

 平安時代から続く公家の家柄でこの国を裏から支えた一族の末裔という、如何にもな設定ですが、己の正義と、日本の正義との差に悩み苦しみ、それでもこの国を守るという意思の権化。それが御崎蔵人という青年です。ある種潔癖症にも見える部分がありますが、左文字局長より清濁併せ吞む度量の大きい人物だと思います。情に厚い部分もあり、詰めが甘いとも言われますが、最強の戦闘力を持ったミラージュとの細い線は保持したまま、左文字も彼のそういう行為を知っていながらも切れないという部分では御崎のバックボーンや彼のとった行動などまだまだ含みのある人物であるという事でしょうか。実際にあの男も御崎をそう評していましたからね。要潤が悩める正義の人をらしく演じていましたが仮面ライダーアギトのG3の中の人のその後って感じで見てた方もいらっしゃったようで。出来るがちょっと甘いエリート像を演じた要潤に拍手です。

ドブネズミ(木暮美佳子)

 このドラマになくてはならないキャラクターで、それだけに彼女を見舞った出来事は衝撃的でした。とは言えある意味そうなる運命だったのかもという気もします。実際、少しずつフラグを立てていたわけだし…。ハッカーキャラというと厭世的で世の中を斜に見ている人物像が多いのですが彼女もそうで、大企業にハッキングや銀行の端数をかき集めて巨額のお金を得てそこから寄付などもしてると嘯く一種の類型的キャラでした。その一方で夢見る乙女なところもあり、映像と音声だけのミラージュに恋をしたりなどドラマの登場人物の中では鐘ヶ淵とともに感情豊かな人物であったように思います。演じた佐野ひなこちゃんがまたそういう声なのでますますそういう感じが。とは言えあのラストは…せめてミラージュにハグされたいという願いが叶ったのは良かったけれど…。ただ本当にそうなったのかという部分はぼやかされていますので一縷の望みはつないでおきたいと思います。



Twitterのコードネームミラージュ公式アカウントのツイートより|今日のドブネズミ|
|(c)2017広井王子/「コードネームミラージュ」製作委員会

左文字局長

 『CRISIS』の鍛冶局長よりも豪腕かつ策略家。平気で相手を陥れ、この国の平和のためなら相手が子供でも処理することをためらわない。ある種ラスボス的なキャラクターです。俗物的に見えるが実は係累が母親だけで守る者が無いという強みを持ち、組織でも特異なポジションを築いている人物として描写されています。K-13を作った際にもドブネズミ以外の人員を直接選んだ人物でK-13の産みの親にして絶対的支配者という立場を利用し、警察権拡大法案を成立させ中央警察庁(FBIのように全国への捜査権と任務時の武器の使用許可を持ち、必要であればそれをもって制圧することができる)の初代長官に収まりました。


 己の正義がすなわち警察組織の正義と嘯けるタイプで言動の端々にそれがうかがい知れます。当然そのためには事件の解決を無理に急がせたり、意にそぐわない時は処理させたり。時には利用できそうな人物は処理せずコマに使うなど大儀の前の小事などという典型的な悪玉ですが、その不気味さをこれまた『仮面ライダー電王』でデンライナーのオーナーというこれまた底知れぬ謎の人物を演じた、石丸謙二郎が怪演しておりまさにはまり役としいかいいようのない迫力を産み出していました。多分あの迫力と底知れなさは石丸さんならではじゃないかなと。スキップ踏んだり、急にオネエ言葉になったり。ジト目で御崎を見たりとか百面相なんですが目が笑っていないというのが一番大きいですよね(笑)

鯨岡憐次郎

 このドラマの真のラスボスですがカリスマ的魅力も備えたある種の魔王的存在です。謎めいた言葉を発し、相手を翻弄し、やがては言いなりにさせる悪のカリスマ。囁くことでなんらかの暗示を与え人を意のままにあやつる技を持ち、自らの手を汚すことなく勢力を拡大してきた非常に危険な男ですが洗脳ではなく彼についていく美女、弁護士の新里(田中えみ)、桜丘(佑実キキ)がついていっているところを見ると度量も大きい男というのも分かります。無敵に近いミラージュにはやはりこれぐらいの男でないとラスボスたり得ません。そんな悪のカリスマ、鯨岡をこれまたエキセントリックな顔立ちの武田真治が演じるのですから、その佇まいからして既に悪のカリスマです(笑)多分彼以外では成立しないキャラクターなんじゃないのかなっていうぐらいにはまっていました。


 最終回前に自殺したと思われていましたが…そこまでの振りで多分そうだろうなと思ったらそうでしたという。そして彼もまた「この世に存在しない」存在となったのです。そしてエピローグで語られたストーリーは2ndSeasonへの期待を上げてくれるものでした。どうなるのかは分かりませんが、その悪のカリスマ性をまた発揮してほしいキャラクターでした。

ロビン

 そうそうもう一人重要なキーパーソン。いやキーAI。それがロビンです。「ナイトライダー」のK.I.Tのような自動車に搭載された高性能AIでミラージュのミッションサポートから移動を助けるまさにミラージュの相棒。その近さによりドブネズミに嫉妬されるほどでした。彼女もまたミラージュとともに感情というものを学んでいったと思いますがラストシーンの衝撃と鯨岡に語られた事により彼女の復活がありえるかもということが示唆されました。ミラージュの傍らにはやはりロビンが必要だと思います。

アクションドラマとして

 かなり先に行ったことをしていると思います。この辺りは『CRISIS』と同じく志が高いなと思いました。元より日本のアクションコレオグラフは他の国に比べて実は水準高いと思うのですが、一般のドラマでは演出の方で若干おとなしくなってる気がします。もっとも『HiGH&LOW』シリーズなどアクションの見せ方もかなり高度になってきているしブレイクスルーが来そうな気もするのですが…。


 『コードネームミラージュ』ではガンアクションや近接戦闘など徒手での戦いやナックル、警棒(バトン)など多彩なアクションシーンがありました。特に18話の敵に操られたスモークが洗脳から解放された後、自らの決着と幕引きをするためにミラージュと対決するエピソードでは『ジョン・ウィック』ばりのガン・フーアクションがさく裂しており、必見といってもいいでしょう。アクション監督は園村健介、CGアニメ映画の『バイオハザード:ヴェンデッタ』『GANTZ:O』や押井監督の『東京無国籍少女』『図書館戦争』などのアクションを担当された方です。『バイオハザード:ヴェンデッタ』や『GANTZ:O』のアクションは評価も高く、『東京無国籍少女』では清野菜名が凄絶なアクションを披露してたのは記憶に新しいところです。

最後に

 警察権拡大法案っていうのはドラマ『相棒』で小野田官房長が考えていた警察庁を警察省へというのに近い考え方で、そこに海外ドラマに近いアクションを放り込むというのは思いついても結局数字がとれないという理由でスルーされがちな企画です。アクションがなく、あくまでも組織間の暗闘やそういう部分でなら重厚さを出して年配者や男性層、そして過度のアクションが無いことから女性層の取り込みも出来るという判断なのでしょうが、そう考えると『CRISIS』は本当に冒険してきたなと感じます。


 だからと言って『コードネームミラージュ』がダメという訳ではなく、むしろそこから深夜帯という特性を活かして一歩も二歩も踏み込んできたという風に感じました。願わくばこの火を絶やさずさらに拡大していってほしいと願うばかりです。2ndSeasonとか映画とか。全く別だけどコンセプトを活かしたドラマとか。ただ2ndSeasonがもしあるとすれば今度はさらにホットな話になりそうです。最終回はそのための布石といってもいい感じでした。沖縄、そしてイスラエル。台湾。鯨岡には他にもアブナイ友人が多そうですし、まさかの『ブラック・ラグーン』的展開もありえますね。


 それとこのドラマ、30分なので1時間でやる話をギュッと濃縮しているのも良かったですね。テンポがいい。内容は1時間ドラマでもいけそうな話を毎回30分でやっている。1時間といっても正味45分ほどの話を25分ほどでやるこの濃縮具合がいいスピード感、緩急となっていてここも良い点の一つとしてあげたいと思います。牙狼などの枠で30分枠ならでは枷を上手に使った感じがします。こういったドラマは昔ゴールデンタイム(プライムタイム)に堂々と放送されていました。世の中今そういう風潮ではないのかもしれませんが、それでもアクションドラマの火は消えないし、面白いものなら観る人はいると思うのです。当然最近の視聴者は理屈を考える方に振りがちですが、そういう暇も与えないスピード感をもってすれば十分勝機はあるのではないかなと思っています。『コードネームミラージュ』そういう兆しのあるドラマでした。

AmazonprimeVideo|『コードネームミラージュ』|(c)2017広井王子/「コードネームミラージュ」製作委員会

※以前に書いた『CRISIS』と『コードネームミラージュ』に出てくる銃に関する考察エントリ。

拳銃は最後の武器『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』『コードネームミラージュ』

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