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『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』第7話で気になった件【ネタバレ】|tonbori堂ドラマ語り

2017年5月24日水曜日

drama

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 早いもので『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』も7話。物語はいよいよラストに向かっています。今回は第1話から、その影がちらついていた平成維新軍の本丸に近づいたエピソードでした。

CRISIS公安機動捜査隊特捜班/ロゴはイメージです
CRISIS公安機動捜査隊特捜班/ロゴはイメージです

CRISIS第7話で気になるポイントは?

 以下気になるポイント毎をストーリーとともに書いてみたいと思います。

テロ予告

 ファミレスで受験勉強をしている高校生たち。一人が時間を確かめるとおもむろにノートパソコンを操作しました。彼らは平成維新軍のメンバー。どこかのサイトをハッキングしたようです。平成維新軍は日本経済振興会のサイトをハッキング、犯行声明文を載せました。警察内部でもテロ阻止に乗り出しますが、まったく正体の掴めない平成維新軍に対し有効な手が無く、特捜班にテロ予告の分析と事前にテロを阻止せよとの命令がくだります。先の総監暗殺を阻止した功績もありますが一方で警察内部でも特捜班を組織した鍛冶局長の切れ者ぶりに警戒する動きが。


 テロの標的が全く掴めない特捜班はチームのデータ分析担当の大山が以前に参加していたハッカー集団『トゥルース・トゥルーパーズ』がその前身ではないかと思っていたのですが今回の予告文の中にフランス革命に関する一節が使われており、それを「坂本」というハンドルネームのハッカーに教えたことを思い出し、『トゥルース・トゥルーパーズ』が『平成維新軍』の母体という疑いが確信に変わったと皆に告げます。当時にやり取りしたメールの中に1本だけプライベートなアドレスから送られたものがあったことからそのIPアドレスを辿りサカモトを特定する特捜班。「坂本」はなんと高校生でした。班長の吉永の取り調べにも全く無表情でしたが、稲見の提案で彼らに近かった大山が「坂本」にやらせてみることに。大山が「岡田」という事に気が付いた「坂本」が失望したといい、この国の未来を憂いて自分たちは行動していると語りだします。「岡田」と一緒に以前、大銀行へのハッキングを計画していた時が一番輝いていたと。

テロ実行

 テロの実行グループは山籠もりで拳銃を射撃訓練をしていました。実行までの日取りはあと1日。入念に訓練を繰り返すテロリストたちは皆若い男女でした。「岡田」こと大山に再会したことで一転饒舌に語りだした「坂本」この国の歪みやシステムに関して一度この国を再構築しなければならないと吉永に滔々と自説を語ります。しかし肝心なテロの標的や仲間については語らず手詰まり感が漂い始めます。押収したPCはパスワードがかけられ中身が調べらず解析もウィルスによる逆ハッキングを警戒して遅々として進まない状況の中、『奇跡でもないと無理』という大山に稲見は『だったら起こして見せろよ、奇跡を』といい思いつく限りのパスワードを試す大山、再度「坂本」と対面した時にある考えが浮かび、そのパスワードを入力しました…パスワードは正しかったのか?テロは阻止できたのか?というあらすじです。

『この国の未来のために』

 平成維新軍の合言葉ですが、未来のためにというほど胡散臭いものはない。この国の総理大臣も未来志向をよく口にされますが、為政者が未来のためにといいながら暴力と弾圧を繰り返したのはというのはよくある話です。アニメーション監督の押井守さんがスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーの言葉を引用してこう語っています。

未来が持つすばらしいイメージ、それを出発点して考える限り、僕に言わせれば、未来を考える意味はほとんどない。なぜなら、こうなってほしいなぁという願望と現実のつじつまをすりあわせようとするに過ぎないから。知り合いで鈴木敏夫(スタジオ・ジブリのプロデューサー)という男がいるんですが、彼がこんなことを言ったんです。「20世紀は、“世の中は若者の力で変えられる”という幻想が支配した時代だ」要するに革命のことです。その幻想が結果として何を生み出したかというと、強制収容所と虐殺だった。レーニンや毛沢東、ポル・ポト──「未来を輝かしいものにするんだ」と言った人たちがひどいことをやっているわけです。だから僕は未来という言葉を警戒します。

ソース|映画監督・押井守が「未来」を語る──1人のクリエイターがたどり着いた、未来論=幸福論という結論|ライフハッカー[日本版]

 もう平成維新軍への返答はこれに尽きるわけですが、ただ彼らの感じている閉塞感っていうのは(ドラマなのでオーバーリアクションですが)それを感じている人は少なからずいるわけです。最近でもテロ等準備罪の法案に共謀罪をということで共謀罪がクローズアップされ「この国の未来のために」という話が出ていましたね。ドラマは現実を写す鏡ですが、性急な世界の改変は結局は不幸しか産みだしません。それは革命でも、為政者が拙速で進めるものもです。とは言え為政者が進めることに対しては一般人は手段を持たず閉塞感が覆いかぶさっていく空気はあります。


 それに対するために暴力に訴えようとした歴史はこの国でもちょっと前にありました。半世紀以上前に日米安保で若い人たちが反発したのは記憶に新しいところですし、学生運動の高まり寄って東大の安田講堂は占拠され、連合赤軍の山岳キャンプでの総括や、あさま山荘事件まで。また爆弾による企業テロというのもありました。それらは半世紀前から30年前に起こった事ですが、時代は流れて、そういう暴力では何も産みだすことはないという事でやがては下火になっていったのですが、最近の不安な世情、長引くデフレと不況によって社会不安、また大きな天災が続くことにより、未来を思い浮かべない人が多くなっているのも事実です。反原発運動の高まりはその表れでしょう。


 そういった空気の中で、いさかさ古びた革命論を打つような少年をあえて登場させたのは戯画化かと思いましたが、それよりも事態は深刻なんだよという金城さんの警鐘なのかもしれません。何故なら人の考える事は、それはフィクションでも同じように起こる事は十分あり得るからです。ただそうなる前に、考えて欲しいという願いもあるかもしれません。今回は特捜班の紅一点、大山の活躍回でもありましたが、そういうメッセージを込めた回であったとも思います。

革命と言えば『SP』の尾形

 そう言えば金城さんの手掛けた『SP』でも革命がクローズアップされましたね。警察の構造改革を考えていた尾形はやがでこの国の根本を変えない限り変わることは無いと思い至り仲間とともに蜂起しました。この辺りは映画版の『野望篇』『革命篇』で語られましたが、今回さらに若い層にという事は、この国を今後どうするかは若い人たち次第という想いなのでしょう。物語の初めの方で平成維新軍に殺害された議員役で出演された螢雪次朗さんは『野望篇』では警護対象の官房長官を演じ、その時は辛くも生き延びましたが、『CRISIS』第3話ではあっさりと暗殺されてしまいましたね。螢雪次朗さんは別のドラマ『コードネームミラージュ』でも官房長官を演じていたので最近そういう役が続いているような(笑)ちなみに私が雪次朗さんを見て思い出すのは平成『ガメラ』シリーズの大迫警部(2作目以降は元)ですね。


 尾形は映画のラストで脱走?というか内部のシンパにより逃亡するような描写がありました。もしかすると、その後大きな勢力により処理されたかもしれませんが、もし逃げ延びて革命の刃を研ぎ澄ませていたとしたら。そして数々の事件の裏で糸を引いていたとしたら?もしかすると鍛冶も昔は同志だったが袂を分かったとか?この世界が『SP』の世界とつながっているかどうかは分かりませんが、暗躍しているのが尾形だとしたら?と考えるのも面白いかもしれませんね。

2017.05.30 誤字を訂正しました。「選挙」→「占拠」

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