春ドラマの刑事モノ『緊急取調室』『小さな巨人』他について。|tonbori堂ドラマ語り-Web-tonbori堂アネックス

春ドラマの刑事モノ『緊急取調室』『小さな巨人』他について。|tonbori堂ドラマ語り

2017年5月15日月曜日

drama

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 現在Web-tonbodi堂アネックスでは刑事ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』を追っかけており、感想というか気になるポイントへのツッコミと蘊蓄エントリを上梓させていただいていますが、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』以外にもこのクールは刑事ドラマが多数放送されています。今回はそんな中から気になる所をいってみたいと思います。

拳銃を構える男|シルエット/イメージフォト
拳銃を構える男|シルエット/イメージフォト


春の刑事ドラマでチェックしたい作品は?

 『相棒』のテレビ朝日は水9枠、木8枠は刑事ドラマが定番などで絶対に2本は放送されるのは通例なのですが、木9枠も刑事ドラマ『緊急取調室』(通称キントリ)。水9枠『警視庁捜査一課9係』木8枠『警視庁・捜査一課長』が放送中です。

 TBSでは9時のドラマ枠日曜劇場で『小さな巨人』。フジは『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』の他刑事ドラマではありませんがミステリーを2本放送しており警察が出てくるドラマが3本。日テレはこのクールは刑事ドラマの放送がありませんがHuluオリジナル『LAST COP』の映画版が公開されています。

 こういった刑事ドラマがやたらとかぶるように見えるのもテレ朝が安定して視聴率が見込める刑事ドラマをシリーズ定番化し、水9枠、木8枠に2本放送しているため、他局で刑事ドラマを放送すると「このクール、やたらと刑事ドラマが多いな」という印象になるのではないでしょうか。全てを網羅したいところですが、tonbori堂が現在視聴しているのはテレ朝定番の2本に加えて『緊急取調室』(キントリ)と『小さな巨人』の2本です。物語も中盤で折り返しにはいったのでざっとした印象についてここで書いておきたいと思います。

『緊急取調室』

 まずは天海祐希主演の『緊急取調室』通称キントリから。主演にフジの『離婚弁護士』や『BOSS』などハンサムウーマンをやらせたらこの人の右に出るものなしな天海祐希を主人公にいわゆる名バイプレーヤー、田中哲司、大杉漣、でんでん、小日向文世、鈴木浩介、速水もこみちを脇に配した、一風変わった刑事ドラマです。通常刑事ドラマは事件が発生、警察(主人公たち)が臨場、事件を捜査。なんだかんだで容疑者を特定。時には警察署で取り調べします。そして罪を認めた犯人を無事逮捕。取り調べは警察署内ではなく、真犯人へ直接告げて取調室では事件の状況などを説明するなどにつかわれていましたが、『緊急取調室』は取調室が主な舞台。

緊急取調室/ロゴはイメージです
緊急取調室/ロゴはイメージです


 逮捕された、または時には出頭してきた犯人と取調室で丁々発止のやり取りの末、事件の真相をひきだすというものです。対人としてはかなり緊張感のあるシーンが頻発しますし、なにより台詞の応酬が多いのでゲスト(大抵、犯人)のと演技合戦が見ものなります。好評だった第1シーズン、そしてスペシャルを経て第1シーズンのレギュラーはそのまま続投。刑事部長役は前回退場した草刈正雄に変わり大倉孝二が新たな刑事部長役で出演。曲者揃いの刑事ドラマになっています。


 基本的に一話完結で前シーズンでは天海祐希演じる主人公、真壁有希子の夫(警察官)の殉職がサブストーリーとしてありましたが、このシーズンでは今のところそういうサブのストーリーは田中哲司演じる梶山管理官が離婚しそうとか小日向文世演じる小石川の家族の事に全く触れないとか家族関係を匂わす話にとどまっています。シーズン1の時は物語の大半が犯人を落とす(完オチ)のが目的なので海外ドラマの『クローザー』辺りも意識しているのかなと思いましたが、芸達者や豪華な犯人役など手堅くまとめてきているし天海祐希はこういう役が本当に映えます。あまり小難しい事を考えずに楽しめるドラマです。


 梶山役田中さんは『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』にも班長として出演中ですが髪型を変えて出演。ちょっとウィッグっぽいんですが、撮影時期はかぶってなかったという気もするし、どうだったんでしょうね。髪型とメガネでキャラを変えてきています。それぞれの役割はシーズン1で説明されているので今回はその部分を強調しているしキャラの掘り下げもして欲しいところですが1クール10話でどこまでいけるか。残り半分も楽しみです。

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『小さな巨人』

 TBSの看板枠日曜9時の日曜劇場枠で放送されている刑事ドラマです。主なスタッフが『半沢直樹』『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』のメンバーであり、若手が中心となって制作されているドラマが『小さな巨人』です。企画にクレジットされている福澤克維は『半沢直樹』、『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』で演出、監督を務め、プロデューサーは同じく『半沢直樹』などを手掛けた伊與田英徳。脚本にも半沢、下町に参加した八津弘幸が協力というかたちで参加。

小さな巨人/ロゴはイメージです
小さな巨人/ロゴはイメージです


 この先のTBSの中核スタッフや脚本家を育てる意味合いもあるのではないかという布陣で、内容は刑事ドラマ版『半沢直樹』というべき内容です。幾つもの壁があって、困難に打ちのめされそうになりながらも、それを突破していく主人公というドラマは『半沢直樹』『小さな巨人』ともに共通するものです。捜査一課長を目標にまい進してきた捜査一課のエースである主人公、香坂(長谷川博己)。世話になった元一課長で芝署署長の三笠(春風亭昇太)との宴席での接待の時に気になった人物に職質をかけた事により大きく運命が変わっていくことになります。


 飲酒をして職質し一般人に暴言という記事がネットに出回り査問会にかけられることに、その宴席に同席した一課長小野田(香川照之)は香坂を守らず切り捨てました。芝署に左遷された香坂はある自殺事件が、あの宴席で職質をかけた人物と関わりがあることに気が付き、やっがて裏にある大きな事件にたどり着くというのが前半の「芝署編」のあらすじです。巨悪というより組織防衛、隠ぺい、組織腐敗というのは今まで幾度も無くドラマになったり映画になったテーマですが『半沢直樹』の手法を刑事ドラマにというのは、考え付きそうなのに何故やらなかったのかという気がします。とはいえ、「くどい」「暑苦しい」という批判もあるし難しい手法でもありますし、なによりワンパターンに陥る恐れもありますが、『半沢直樹』で確立した前半、後半に分けて山をそれぞれもってくるパターンを今回も採用。そして事件は解決しても巨悪は眠らないという展開は後半へのひきもOKという感じでは無いでしょうか。


 ただ1話完結タイプのドラマではないので途中からだという人にも、毎回頭にこれまでのお話を簡単に入れるなど工夫していますが、肝心の事件の概要などなど『相棒』などの一話完結刑事ドラマを観ている人には、いやそれぐらい杉下右京なら1回(放送回)で見破るよ!ってなる人もいるようです。なので大きな壁を打ち破る組織のブレイクスルードラマとして観ると楽しいのですが刑事ドラマとして観るとちょっとイライラするかもしれません。もっともそのブレイクスルーにしても後半のクライマックスのために前半はストレスの上がる作りになっているので、せっかちな人にももしかすると向かないかも。ですが『下町ロケット』などが好きな人には今回のドラマは非常に盛り上がれる要素も多く脇役のキャストなどにも遊び心があるのでおすすめできるドラマです。


 また主人公を長谷川博己、その妻役に市川実日子という『シン・ゴジラ』のキャストや香坂の台詞に『シン・ゴジラ』の矢口を重ねる人も多く、Twitterなどではドラマのつぶやきのタイムラインが突如『シン・ゴジラ』と被ってくることもしばしばあります。そういうキャスティングも楽しめる人にはうってつけです。

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『警視庁捜査一課9係』『警視庁・捜査一課長』

 テレ朝のレギュラードラマといっていいでしょう。特に『9係』はシーズン12という長きにわたっての放送で、開始した時はそこまで息の長いドラマになるとは思ってもみませんでした。ただつい先日、9係係長加納倫太郎役渡瀬恒彦さんがお亡くなりになり、そういった意味では今後どのようになるのか(今回のドラマも渡瀬さんの復帰を願って初回はそれまでのシーンを使って出向したという扱いになっています)非常に気になりますが残ったメンバーで奮闘しているのは、映画『ワイルドスピード』シリーズのようなファミリー感を感じます。シーズンも折り返しですが、渡瀬さんの死も乗り越えてこのメンバーでまた遺志を継いでいってほしいシリーズです。

警視庁捜査一課9係/ロゴはイメージです
警視庁捜査一課9係/ロゴはイメージです


 『警視庁・捜査一課長』は内藤剛志さんの土曜ワイド劇場の初主演作品を連続ドラマにしたものです。安定した視聴率でシーズン2が製作される運びになったというのは同じ土曜ワイドから連続ドラマになった『相棒』を思い出します。

警視庁捜査一課長/ロゴはイメージです
警視庁捜査一課長/ロゴはイメージです




 内容は一話完結のスタイルですが主人公が警視庁の刑事部のエースでありその最高指揮官でもある捜査一課長ということもあり、捜査一課長が主人公に立ちふさがる最大の壁でもある『小さな巨人』が放送されているということもあっていろいろ味わい深いものがあります。同時期に同じ部署の役職についているものが重要な役割を持つことにより互いのドラマに影響し合うと面白いのはないでしょうか。

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今後こういう刑事ドラマが観てみたい。

 そういえば深夜の先のクールでは特撮ドラマ『牙狼』シリーズ『絶狼‐ZERO‐DRAGON BLOOD』をやっていた後番組がゲームクリエイターの広井王子原案のサスペンスアクション『コードネームミラージュ』が放送されています。初回は観ましたが、以前にフジで放送された『ジョーカー許されざる捜査官』と『CRISIS』にだぶる設定で、警察内部の秘密部署が犯罪者を人知れず処理していくというハードアクションでした。

 銃撃シーンもハリウッドを参考にしたCQCスタイルでしたが、それを観ていて昔あったような『西部警察』『大追跡』のような派手な銃撃戦と『64』『外事警察』のような重い重厚なドラマを融合させたドラマは作れないものかなと思いました。私はアメリカのドラマが好きなんですが、例えば『NCIS:LA』のような作品とか。『HAWAII FIVE-0』とか。銃撃戦もたっぷり、そして時事ネタもとりいれたストーリー。そういう視点では『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』は期待して、今のところ毎回楽しみなドラマの一つになっていますが、例えばどちらかに振ったというか銃撃戦大目ドラマとかさらに重厚ドラマとかも作って貰えると刑事ドラマファンとしては嬉しいところです。

おすすめの海外刑事ドラマと日本の刑事ドラマセレクト

※おすすめ刑事ドラマ

※米CBSで放送中の『HawaiiFive-0』シーズンを重ねて現在シーズン7までいっています。主人公マクギャレットとダノの掛け合いや仲間(ハワイ語でオハナ)、チン、コノたちとのチームワークで事件を解決する刑事ドラマです。州知事直属なので基本的にハワイ(だいたいオアフ島)でド派手暴れるパターンです。

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NCISもCBSの看板シリーズでリンクを入れたのはスピンオフシリーズの『NCIS:LA~極秘潜入捜査』ですが、本家も『NICS:ニューオーリンズ』なども面白い刑事ドラマに仕上がっています。NCISという米海軍が関わった犯罪を捜査するという一風変わった組織が取り上げられたことによりいろいろ展開が国家機密にかかわったり国際的になったりという部分がスケール感を感じさせるのと同時にキャラクターの掘り下げもよいドラマです。

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※日本からは『64』横山秀夫原作小説のドラマ化ですが、地方の県警という組織に人間関係の濃い縮図と未解決事件がかぶさり重厚なドラマに仕上がっています。映画版もありますがドラマ紹介なのでドラマ版をあげました。そしてアクション系では『大追跡』永遠の若大将、加山雄三さんがキャップとしてアウトローな刑事を束ねて横浜の闇に迫るというドラマで、沖雅也、長谷直美、柴田恭兵、藤竜也という個性豊かな渋いキャストに軽快なストーリーで毎回楽しみにしていたドラマでした。どのドラマも個性豊かで面白い作品で是非ご覧いただければと思います。

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